家族が逮捕されたとき、弁護士に依頼すべきか。依頼するならいつか
解説刑事事件
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「ご家族を逮捕しました」。警察から突然そう連絡を受けたとき、多くの方は、弁護士に頼むべきなのか、頼むとしたらどこに、いつ頼めばよいのか、判断がつかないまま時間が過ぎてしまいます。
逮捕された後の手続は、短い期限で次々に進みます。そして、弁護士を付ける方法は、ご家族が費用を払って依頼する「私選弁護人」だけではありません。
この記事では、弁護士を付ける3つの方法の違い、ご家族が私選弁護人への依頼を考えたほうがよい場合、そして依頼する時期ごとに弁護士ができることを説明します。
逮捕された後の流れ
逮捕された後の手続は、法律で期限が決められています。
- 逮捕から48時間以内:警察は、本人を釈放するか、検察庁に送るか(送致)を決めます。
- 送致から24時間以内:検察官は、本人を釈放するか、裁判官に勾留(引き続き身柄を拘束すること)を求めるかを決めます。
- 勾留が認められると、勾留の請求の日から10日間:本人は引き続き警察署などに留置され、取調べを受けます。勾留は、さらに最大10日間延長されることがあります。
- 勾留の期間内:検察官が、起訴するか、不起訴にするかを決めます。決めないまま釈放し(処分保留)、その後も捜査を続けることもあります。
つまり、1つの事件で逮捕されてから起訴・不起訴が決まるまで、最長で23日間、身柄の拘束が続くことがあります。別の疑いで再び逮捕された場合や、起訴された後に保釈が認められない場合は、拘束はさらに続きます。
逮捕されてから勾留が決まるまでの間(最大3日間ほど)は、ご家族であっても本人と面会できないのが通常です。この間に本人と面会できるのは、弁護士だけです。
勾留が決まった後も、裁判官が「接見禁止」を付けると、ご家族は引き続き面会も手紙のやり取りもできません。共犯者がいるとされる事件や、本人が疑いを否認している事件で付くことがあります。この場合も、弁護士は面会できます。
弁護士を付ける3つの方法
| 当番弁護士 | 国選弁護人 | 私選弁護人 | |
|---|---|---|---|
| 付けられる時期 | 逮捕直後から | 勾留が決まった後 | 逮捕直後から(逮捕前も可) |
| 費用 | 初回の面会は本人・家族の負担なし | 原則として国が負担 | 本人・家族が負担 |
| 弁護士を選べるか | 選べない | 選べない | 選べる |
| 弁護の継続 | 条件が合えば、そのまま私選弁護人として依頼するのが通常 | 起訴前は起訴または釈放まで。起訴後は第一審の判決まで(いずれも原則) | 契約による |
当番弁護士
当番弁護士は、私選弁護人を付けたいという申出を弁護士会が受けて、弁護士を警察署に派遣する制度です。派遣された弁護士が本人と面会し、助言をします。初回の面会について、本人やご家族が費用を負担することはありません。
ご家族からも依頼することができ、愛知県内の警察署に留置されている場合は愛知県弁護士会に連絡します。派遣される弁護士を指名することはできません。
面会の後、本人がその弁護士と費用などの条件で折り合えば、そのまま私選弁護人として依頼するのが通常です。
国選弁護人
勾留が決まった後は、本人が請求すれば、原則として国の費用で弁護人が選ばれます。
国選弁護人は裁判所が選ぶため、本人やご家族が弁護士を選ぶことはできません。
国選弁護人が付くのは、起訴される前(被疑者)の段階では、原則として起訴されるか釈放されるまでです。起訴された後(被告人)の段階では、原則として第一審の判決までです。途中で私選弁護人が付いた場合は、国選弁護人は解任されます。
私選弁護人
本人またはご家族が、弁護士と直接契約して依頼する方法です。
本人の配偶者、直系の親族(父母、祖父母、子、孫など)、兄弟姉妹は、本人とは別に、ご自身で弁護人を選ぶことができます(刑事訴訟法30条2項)。本人と連絡が取れない状況でも、ご家族から依頼することができます。
ただし、私選弁護人を依頼するかどうかは、本人の意向も大切です。ご家族が依頼する場合でも、弁護士が本人と面会し、本人の意思を確認したうえで弁護を進めます。
まずは、本人のもとに弁護士を
どの方法を選ぶにしても、逮捕されたら、できるだけ早く本人のもとに弁護士が面会に行くことが大切です。
本人は、突然の逮捕で不安な状態のまま、取調べを受けています。取調べで話したことは、記録に残り、後の処分や裁判に影響します。黙秘権があること、取調べにどう臨めばよいか、これからどうなるのかを、早い段階で弁護士から伝えることには大きな意味があります。
私選弁護人に依頼するかどうか迷っている間に時間が過ぎてしまう場合は、まず当番弁護士を呼んでください。1回目の面会は費用の負担なく、逮捕直後に弁護士が本人と面会できます。
私選弁護人への依頼を考えたほうがよい場合
国選弁護人も、弁護人としての職務は私選弁護人と変わりません。被害者との示談交渉も、国選弁護人が行います。
そのうえで、次のような場合は、ご家族が私選弁護人への依頼を考える意味があります。
勾留を避けたい場合(逮捕直後)
勾留を避けるための働きかけは、検察官が勾留を請求する前、裁判官が勾留を決める前に行う必要があります。
国選弁護人が付くのは勾留が決まった後なので、この段階の活動はできません。逮捕直後から継続して動ける弁護人が必要な場合は、私選弁護人に依頼することになります。当番弁護士として面会した弁護士に、そのまま依頼することもできます。
勾留されずに済めば、仕事や学校を長く休まずに済む可能性が高まります。
釈放された場合や、逮捕されずに捜査が進んでいる場合
逮捕の後に釈放された場合や、逮捕されず自宅で生活しながら警察の呼出しを受けている場合(在宅事件)は、勾留されていないため、起訴されるまで国選弁護人は付きません。
釈放されても、事件が終わったわけではありません。捜査はその後も続きます。特に、暴行や盗撮など被害者がいる事件では、被害者との示談が成立しなければ、起訴(公開の法廷での裁判を開かずに罰金などを科す「略式起訴」を含みます)される可能性が高くなります。起訴されて有罪となれば、罰金であっても前科が付きます。
この段階で弁護士の助言を受けたり、被害者との示談を進めたりするには、私選弁護人に依頼する必要があります。
弁護士を選びたい場合
事件の内容や本人の状況によっては、同じ種類の事件を扱った経験のある弁護士や、ご家族と連絡を取りやすい弁護士を選びたいと考えることもあるでしょう。国選弁護人では、弁護士を選ぶことはできません。
私選弁護人への依頼を急がなくてもよい場合
一方で、すでに国選弁護人が付いていて、本人がその弁護人と相談しながら対応できている場合は、私選弁護人への依頼を急ぐ必要性は高くありません。
依頼する時期ごとに弁護士ができること
逮捕直後(勾留が決まる前)
- 本人と面会し、取調べへの対応を助言します。
- 検察官や裁判官に、勾留しないよう求める意見書を出します。ご家族に身元引受人になっていただくことが、そのための大切な資料になります。
- 本人の了解を得た範囲で、ご家族に本人の様子や今後の見通しをお伝えします。
勾留が決まった後
- 勾留の決定に対する不服申立て(準抗告)を検討します。
- 接見禁止が付いている場合は、ご家族との面会を認めるよう求めます(接見禁止の一部解除の申立て)。
- 被害者がいる事件では、被害者との示談交渉を行います。
- 不起訴や処分の軽減を求めて、検察官に意見書や資料を提出します。
起訴された後
- 保釈の請求を検討します(保釈は起訴された後の制度で、起訴される前の段階にはありません)。
- 証拠を検討し、刑事裁判に向けた準備をします。
- 事実を争う事件にも、認めている事件にも対応します。
どの段階からでも依頼はできますが、早く依頼するほど、弁護士がとれる手段は多くなります。
弁護士が決まるまでの間、ご家族に控えていただきたいこと
被害者に直接連絡しない
ご家族が被害者に直接連絡すると、被害者の方を一層不安にさせたり、証拠を隠そうとしていると疑われたりするおそれがあります。被害者との話し合いは、弁護士を通じて行うのが通常です。被害者の連絡先も、通常は、被害者の了解を得たうえで弁護士にだけ伝えられます。
面会で事件の話を詳しくしない
勾留が決まった後の一般の面会には、警察官が立ち会います。事件の内容について話したり、関係者への伝言を頼まれて応じたりすると、本人にとって不利な事情として扱われるおそれがあります。
勤務先への説明は、弁護士と相談してから
勾留が続くと、本人は長期間、仕事を休むことになります。勤務先にどこまで伝えるかは、その後の本人の生活に大きく関わります。伝える前に、弁護士と相談することをおすすめします。
ご相談にあたって
ご家族が逮捕されたときは、次の事項を確認したうえで、できるだけ早くご連絡ください。
- どこの警察署に留置されているか
- 何の疑いで逮捕されたか(罪名)
- いつ逮捕されたか
急ぎのご相談は、お問い合わせフォームではなく、お電話でお願いします。
ご相談では、事件の内容や本人の状況をうかがったうえで、私選弁護人に依頼する必要があるかどうかも含めてご説明します。費用については「費用のご案内」をご覧ください。
逮捕されていなくても、警察から呼出しを受けている段階でのご相談もお受けしています。