自己破産で借金の支払いを免れないのはどんな場合か。免責不許可事由と裁量免責

解説債務整理

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「借金の原因がパチンコなので、自己破産はできないのではないか」「親にだけは返してしまった」。自己破産を考える方から、こうしたご相談をよく受けます。

自己破産では、裁判所から「免責」の決定を受けることで、借金の支払義務を免れます。ただし、法律は、免責が認められない事情(免責不許可事由)を定めています。

もっとも、免責不許可事由があるからといって、すぐに自己破産をあきらめる必要はありません。この記事では、免責不許可事由の中身と、それでも免責が認められる場合について説明します。

自己破産と免責の関係

自己破産の手続は、大きく分けて次の2つの段階からなります。

  • 破産手続:債務者の財産をお金に換えて、債権者に分配する手続です。財産がほとんどない場合は、すぐに手続を終えることもあります。
  • 免責手続:破産手続で払いきれなかった借金について、支払義務を免除するかどうかを裁判所が判断する手続です。

個人が自己破産を申し立てると、同時に免責の申立てもしたものとみなされます(破産法248条4項)。借金の支払いを免れるという効果は、破産手続ではなく、免責の決定によって生じます。

免責不許可事由とは

裁判所は、次のいずれの事情にもあたらない場合には、免責を認めます(破産法252条1項)。言いかえると、次の事情(免責不許可事由)がある場合は、原則として免責が認められません。

号 主な内容 たとえば
1号 債権者を害する目的で、財産を隠したり、壊したり、不当に安く処分したりした 預金を家族の口座に移す、車を親族に安く譲る
2号 破産を先に延ばすために、著しく不利な条件で借金をしたり、クレジットで買った商品を著しく安く売ったりした クレジットカードで買った商品をすぐに売ってお金に換える
3号 特定の債権者にだけ、義務がないのに、または期限より前に返済したり担保を付けたりした 親や友人、勤務先からの借金だけを先に返す
4号 浪費やギャンブルなどで、著しく財産を減らしたり、過大な借金をしたりした パチンコ・競馬などのギャンブル、収入に見合わない買い物
5号 申立ての前1年以内に、返済できない状態なのに、そうでないとうそをついて借金をした 収入や他の借金をいつわってお金を借りる
6号 帳簿などの書類を隠したり、偽造したりした 事業の帳簿を捨てる、書き換える
7号 うその債権者の一覧を裁判所に出した 一部の債権者をわざと載せない
8号 裁判所の調査で、説明を拒んだり、うその説明をしたりした 借金の理由や財産について事実と違う説明をする
9号 不正な手段で、破産管財人などの仕事を妨げた 管財人に資料を渡さない、財産を勝手に処分する
10号 前に免責を受けるなどしてから7年以内に、免責の申立てをした 前の自己破産の免責が確定してから7年たっていない
11号 破産手続での説明義務や、財産を開示する義務などに違反した 管財人の求めに応じて説明しない

特に問題になりやすいもの

ご相談でよく問題になるのは、次のような場合です。

  • ギャンブルや浪費(4号):パチンコ、競馬、競艇などのほか、収入に見合わない買い物や遊興費も問題になります。FX(外国為替証拠金取引)や暗号資産の取引など、投機的な取引による損失も、ギャンブルと同じように扱われることがあります。いずれも、金額や程度によって判断されます。
  • 一部の債権者への返済(3号):家族や友人、勤務先から借りたお金を、ほかの債権者より先に返してしまうことです(偏頗弁済)。親しい人に迷惑をかけたくないという気持ちから起こりやすいのですが、債権者を公平に扱うという破産の考え方に反します。返す約束の日より前に返した場合や、お金の代わりに物で返した場合などが、3号にあたります。次の節で詳しく説明します。
  • カードでの換金(2号):クレジットカードで商品を買い、すぐに売ってお金に換えることです。いわゆる「クレジットカードの現金化」も含まれます。
  • 前回の免責から7年以内(10号):7年は、前回の自己破産で免責の決定が確定した日から、今回の自己破産の申立ての日(免責の申立ての日)までで数えます。前回が個人再生(給与所得者等再生)だった場合や、個人再生の途中で返済が難しくなって免責を受けた場合は、再生計画の認可の決定が確定した日から数えます。

特定の債権者への返済(偏頗弁済)について

特定の債権者にだけ返済することを「偏頗弁済(へんぱべんさい)」といいます。ご相談で特に多いのが、この偏頗弁済にあたるかどうかという質問です。

偏頗弁済は、返し方や時期によっては、免責不許可事由(3号)にあたります。3号にあたらない、約束どおりの返済であっても、後で説明するように、破産管財人が返済を受けた人からお金を取り戻すことがあります。どちらにしても、特定の債権者にだけ返済することは避けなければなりません。

いつからの支払いが問題になるか

問題になるのは、借金を返せない状態になった後の支払いです。弁護士に自己破産を依頼すると、弁護士から各債権者に通知(受任通知)を送り、返済を止めます。少なくともこの時点からは、すべての債権者を公平に扱わなければなりません。それより前でも、すでに返済が行き詰まっていた後の支払いは、問題になることがあります。

そのため、「いつの時点で、何のための支払いか」を分けて考えることが大切です。

支払ってよいもの、支払ってはいけないもの

ポイントは、毎月新しく発生する料金か、すでにある借金の返済かです。

支払い 扱い 理由
毎月の家賃 支払ってよい その月に住むための料金で、毎月新しく発生するもの
携帯電話の毎月の利用料(通信料) 支払ってよい 毎月の利用に応じて新しく発生する料金で、すでにある借金の返済ではない
携帯電話の本体代金の分割払い 支払ってはいけない すでに買った端末の代金で、過去の借金の返済にあたる
家族・友人・勤務先からの借金の返済 支払ってはいけない 特定の債権者だけへの返済になる
自動車ローンの返済 支払ってはいけない 車を残したくても、特定の債権者だけへの返済になる

携帯電話の料金は、毎月の請求書に、利用料と本体代金の分割払いがまとめて載っていることがよくあります。利用料は支払ってかまいませんが、本体代金の分割払いは、すでにある借金の返済として扱われます。請求の内訳を確認したうえで、どう支払うかを弁護士と相談して決めてください。

なお、ここでいう「支払ってよい」は、偏頗弁済にあたらないという意味です。たとえばスポーツジムの会費のような毎月の料金も、すでにある借金の返済ではないので、偏頗弁済の問題にはなりません。ただ、その契約を続けるべきかどうかは別の問題です。自己破産の手続では家計の状況も見られるため、生活に必要かどうかを考えて、見直すことも大切です。

口座からの自動引落しや、給料からの天引きで返済している場合は、そのままにしておくと、意図せず特定の債権者にだけ返済したことになります。止め方は、弁護士と相談してください。

家族が自分のお金で払う場合

本人のお金ではなく、家族が自分のお金で、本人の借金を払うことがあります。この場合は、本人の財産が減るわけではないため、通常は偏頗弁済の問題にはなりません。

ただし、本人が後で家族にそのお金を渡したり、もともと本人のお金を家族の口座を通して払ったりした場合は、本人が返済したのと同じことになります。家族が払うことを考えている場合も、事前にご相談ください。

家賃の滞納分は別に考える

家賃は、住まいを維持し、生活を続けるために欠かせない費用です。そのため、家賃を多少滞納していて、その滞納分を支払ったとしても、通常は、偏頗弁済として問題にされることはありません。

ただし、滞納が長く、額が大きい場合は、扱いが変わることもあります。家賃を滞納している場合は、申立ての前にご相談ください。

偏頗弁済をしてしまったら

偏頗弁済があると、破産管財人が選ばれて、事情を調べることになりやすくなります。破産管財人は、返済を受けた人に対して、受け取ったお金を返すよう求めることがあります(否認権。破産法162条)。返済を受けたのが家族の場合は、事情を知っていたものと推定されるため、取り戻されやすくなります。家族や友人に返したお金が、その人から取り戻されることもあるということです。

それでも、偏頗弁済をしてしまったことを正直に申告し、手続に協力すれば、裁量免責が認められる余地はあります。隠さずにご相談ください。

免責不許可事由があっても、免責が認められることがある(裁量免責)

免責不許可事由があっても、裁判所は、破産に至った経緯その他一切の事情を考えて、免責を認めることが相当であると判断すれば、免責を認めることができます(破産法252条2項)。これを「裁量免責」といいます。

実際には、ギャンブルや浪費があった場合でも、裁量免責が認められることは少なくありません。

裁量免責が認められるかどうかは、たとえば次のような事情を考えて判断されます。

  • 免責不許可事由にあたる行為の内容と程度(金額、期間、借金全体に占める割合など)
  • 借金をするに至った経緯
  • 反省しているか、ギャンブルをやめるなど、生活を立て直そうとしているか
  • 破産の手続に誠実に協力しているか(説明や資料の提出をきちんとしているか)
  • 債権者の意見

裁判所や事案によっては、破産管財人が選ばれて事情を調べたり、手続の間の家計の状況を報告するよう求められたりすることがあります。名古屋地方裁判所で、免責について調べる必要がある場合の扱いは、「自己破産で「管財事件」になるのはどんな場合か(名古屋地裁の基準)」をご覧ください。

いちばん大切なのは、正直に申告すること

免責不許可事由の中には、手続の中での態度にかかわるもの(7号、8号、9号、11号)があります。

ギャンブルの事実や、特定の人への返済を隠したり、うその説明をしたりすると、それ自体が新たな免責不許可事由になります。そうなると、もともとの事情だけなら認められたかもしれない裁量免責も、認められにくくなります。財産を隠すなどの行為は、事情によっては犯罪(詐欺破産罪など)にあたることもあります。

ご相談の段階で、借金の理由や、これまでの返済、財産の動きを、ありのままお話しください。弁護士には守秘義務があります。不利に思える事情も、早くお聞きできれば、それを前提に、裁量免責に向けた準備や、ほかの手続の検討ができます。

申立ての前にしてはいけないこと

自己破産を考え始めたら、申立ての前でも、次のことはしないでください。免責不許可事由にあたったり、破産管財人による取戻しの対象になったりして、免責が認められなくなるおそれや、手続の負担が重くなるおそれがあります。

  • 家族や友人など、特定の人にだけ借金を返す(携帯電話の本体代金の分割払いや、自動車ローンの返済も同じです)
  • 財産を家族の名義に移す、安く売る
  • クレジットカードで買い物をして、それを売ってお金に換える
  • 返せないと分かっていながら、新たに借金をする

すでにしてしまった場合も、隠さずにご相談ください。

免責されても支払義務が残るもの

免責不許可事由とは別に、免責の決定を受けても、支払義務がなくならないもの(非免責債権)があります(破産法253条1項)。

  • 税金や社会保険料
  • 養育費や婚姻費用など、家族を扶養する義務にもとづくもの
  • わざと(悪意で)他人に損害を与えたことによる損害賠償
  • 故意や重大な過失で、人の生命や身体を傷つけたことによる損害賠償
  • 従業員に支払うべき給料など
  • 知っていながら債権者の一覧に載せなかった債権(その債権者が破産を知っていた場合を除きます)
  • 罰金など

これらは、免責が認められても支払わなければなりません。

免責が難しい場合のほかの方法

免責不許可事由の程度が重く、裁量免責も難しいと見込まれる場合は、ほかの方法を検討します。

  • 個人再生:裁判所を通じて借金を減らし、原則3年で返していく手続です。自己破産のような免責不許可事由の定めはないため、ギャンブルや浪費による借金があっても、利用できる場合があります。ただし、継続的な収入があることのほか、手続の種類によっては、借入先の一定数以上が反対しないことが必要になるなどの条件があります。前回の自己破産の免責などから7年以内の場合は、使える手続が限られます。
  • 任意整理:貸金業者などと交渉して、将来の利息をなくすなどして、分割で返していく方法です。

それぞれの手続の違いは、債務整理のページをご覧ください。

ご相談にあたって

免責不許可事由があるかどうか、あるとしても裁量免責が見込めるかどうかは、借金の経緯や金額、これまでの生活の状況によって変わります。

当事務所では、借入れや返済の経過を一覧にして整理し、自己破産、個人再生、任意整理のそれぞれを選んだ場合の見込みを試算して、比較しながら方針を決めていただけるようにしています。

債務整理に関するご相談は、無料でお受けしています。ギャンブルや浪費が原因の借金でも、あきらめる前にご相談ください。

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