外国籍の家族が逮捕された、入管に収容されたら。退去強制令書が出る前に知っておきたい在留特別許可
解説外国人問題
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この記事は、ご本人のご家族や支援者の方、通訳の方に読んでいただくことを考えて書いています。一文を短くし、むずかしい言葉には言い換えを添えています。
この記事を読んでほしい方
次のような方に読んでいただきたい記事です。
- 外国籍の家族や知り合いが、警察に逮捕された。
- 外国籍の家族や知り合いが、入管に収容された(入管の施設に入れられた)。
このような場合、最後に「退去強制令書」(たいきょきょうせいれいしょ)が出ることがあります。日本から出ることを命じる書面です。罪の種類や、刑事事件の結果によります。
退去強制令書が出た後では、取れる方法がとても少なくなります。いまの段階で動くことが大切です。
どのような場合に退去強制令書が出るか
退去強制令書が出るのは、主に次のような場合です。在留資格(日本にいてよい資格)を持っている人や、永住者でも、対象になることがあります。
| 理由 | 対象になる人 | 刑事事件との関係 |
|---|---|---|
| 在留期間が過ぎていた(オーバーステイ)、許可のない仕事を主にしていたなど、入管法に違反した | 違反をした人 | 刑事裁判にならなくても、対象になります。不起訴(裁判にかけないこと)で外に出られても、入管の手続は別に進みます |
| 1年を超える拘禁刑(刑務所に入る刑)の判決を受けた。執行猶予(すぐには刑務所に入らないこと)が付かなかった | 永住者を含む、すべての人 | 罪の種類は問いません |
| 麻薬・覚醒剤・大麻などの罪で、有罪の判決を受けた | 永住者を含む、すべての人 | 執行猶予が付いても、罰金でも、対象になります |
| 窃盗・傷害・詐欺・住居侵入などの罪で、拘禁刑の判決を受けた | 仕事・留学・家族滞在など、活動に応じた在留資格の人。永住者、日本人の配偶者、永住者の配偶者、定住者(日本に長く住むことを認められた人)などは除きます | 執行猶予が付いても、対象になります。罰金だけなら、この理由では対象になりません |
表のどれにも当たらない場合は、入管の手続にはなりません。
なお、特別永住者の方は、別の法律で決まっています。退去強制になるのは、とても重い罪の場合などに限られます。
これから何が起きるか
警察に逮捕された場合は、まず刑事事件の手続が進みます。その後、退去強制の対象になる場合は、入管の手続に移ります(同時に進むこともあります)。入管に収容された場合は、入管の手続から始まります。
| 段階 | 何が起きるか |
|---|---|
| 1. 警察・検察の取調べ | 逮捕と勾留(引き続き、警察署などにとどめること)が続きます。起訴されるかどうか決まるまで、最長23日間です |
| 2. 刑事裁判 | 起訴(裁判にかけること)されると、裁判になります。判決に執行猶予が付くこともあります |
| 3. 入管に移る | 退去強制の対象になる場合は、入管の手続に移ります。刑務所に入った場合は、刑を終えたとき、または仮釈放のときです。入管の施設に収容されることが多いです |
| 4. 入管の取調べ(違反調査) | 入管の職員が、ご本人から事情を聞きます |
| 5. 入管の審査 | 入管の審査官が、日本から出るべき人に当たるかを決めます |
| 6. 口頭審理・異議の申出 | 結果に納得できないときは、口で求めて、もう一度話を聞いてもらえます(口頭審理)。その結果にも納得できないときは、法務大臣に不服を申し出ます(異議の申出)。どちらも、結果を伝えられてから3日以内です |
| 7. 在留特別許可の申請 | 日本に残ることを認めるよう、求めます。期限は3日以内です。 数え始めるのは、審査の結果に従うと決めた日か、口頭審理・異議の申出の結果を伝えられた日です |
| 8. 退去強制令書 | 日本に残ることが認められないと、この書面が出ます |
日本に残るために大切なのは、8の書面が出る前の段階です。期限は、どれも3日しかありません。
刑務所や拘置所にいる間に、入管の職員が来て、手続が進むこともあります。そのときも、3日の期限は同じです。
刑事事件の段階で大切なこと
刑事事件の結果は、退去強制の対象になるかどうかと、後の入管の判断の両方に影響します。
- 判決に執行猶予が付くかどうかで、退去強制の対象になるかどうかが変わることがあります。
- 1年を超える刑で、執行猶予が付かなかった場合、在留特別許可はとても難しくなります。
刑事事件の段階から、入管の手続のことも考えて弁護してもらうことが大切です。
また、警察での取調べで話した内容は、後の入管の手続でも使われることがあります。
家族が逮捕されたときに弁護士を付ける方法は、こちらのコラムで説明しています。
日本に残るための「在留特別許可」
在留特別許可(ざいりゅうとくべつきょか)は、日本に残ることを特別に認めるものです。本来は日本から出なければならない人が対象です。
- 入管の手続の途中で申請します:期限は3日以内です。審査の結果に従うと決めた日か、口頭審理・異議の申出の結果を伝えられた日から数えます。
- 結果に従ったまま3日を過ぎると:すぐに退去強制令書が出ます。
- 認められると:在留資格(日本にいてよい資格)が決められます。多くの場合、在留カードももらえます。
- 認められるかどうか:入管が、ご本人と家族の事情を全体として見て判断します。
判断で見られる事情
入管は、主に次のような事情を見て判断します。
| 有利に見られることがある事情 | 不利に見られることがある事情 |
|---|---|
| 日本人や永住者・定住者などと結婚していて、一緒に暮らしている | 重い犯罪をしたことがある |
| 日本人や特別永住者の子どもを育てている | 偽物のパスポートや在留カードを使った |
| 日本で生まれた、または日本で育った子どもがいる。日本の学校に通っている | 在留期間を過ぎてからの期間が長い |
| 在留資格を持って、長く日本で暮らしていた | 許可のない仕事をしていた |
| 病気の治療を日本で続ける必要がある | 入管の手続でうそを言った |
| 以前にも日本から退去強制されたことがある | |
| 仮放免や監理措置の条件を守らなかった。逃げたことがある |
ここに挙げた事情は一例です。どれか一つで決まるわけではありません。有利な事情を、書類でしっかり示すことが大切です。
入管の取調べでは、事実をそのまま話してください。うそを言ったことが分かると、不利に見られます。
家族や支援者が準備できること
在留特別許可を求めるときは、次のような書類が役に立ちます。3日の期限に間に合うよう、早めに集め始めてください。
- 結婚していることが分かる書類(婚姻届の受理証明書。日本人と結婚している場合は、戸籍謄本)
- 一緒に暮らしていることが分かるもの(日本に住む家族の住民票、写真、手紙など)
- 子どもの学校の在学証明書や成績表
- 仕事をしていたことが分かる書類、税金を納めていたことが分かる書類
- 病気の診断書
- 家族や勤め先、地域の方などの手紙(ご本人を必要としていることを書いたもの)
外国語の書類も、そのままお持ちください。
収容から出るための手続
入管に収容されている間も、外で暮らせるように求める方法があります。
- 監理措置(かんりそち):収容をやめて、外で暮らせるようにするものです。支援者などが「監理人」になり、ご本人の生活を見守ることが条件です。300万円までの保証金を求められることがあります。
- 仮放免(かりほうめん):一時的に、外に出られるようにするものです。主に、健康の問題などがある場合です。ご本人のほか、配偶者、親や子など、兄弟姉妹からも求めることができます。
外で暮らせれば、家族と会いながら、在留特別許可の準備ができます。
監理人を引き受ける方へ
監理人には、ご本人の生活の様子を入管に伝える役目があります。ご本人が条件を守らなかったときや、いなくなったときは、入管に届け出る義務があります。
届出を怠ると、10万円以下の過料(罰金とは別の、お金を納めさせる制裁)の対象になります。引き受ける前に、役目をよく確かめてください。
退去強制令書が出てしまった後
退去強制令書が出た後でも、次の方法があります。ただし、どれも簡単ではありません。2つは、目的がちがいます。
裁判で争う(取消訴訟)
「入管の決定がまちがっていた」と主張して、決定を取り消すよう、裁判所に求めます。
- 決定を知った日から、6か月以内です。
- 裁判を起こすだけでは、送還(国に帰されること)は止まりません。
- 送還を止めるには、「執行停止」(決定の効き目を一時止めること)の申立てが、別に必要です。
再審情願(さいしんじょうがん)
法務大臣が自分の判断で(職権で)在留特別許可を出すよう、求めるお願い(上申)です。法律に決まった申請の手続ではありません。
- 主に、退去強制令書が出た後に、新しい事情が生まれた場合に使います。たとえば、結婚した、子どもが生まれた、重い病気が見つかった、などです。
- 決定がまちがっていたと争うものではありません。そこが、裁判とちがう点です。
- 許可が出るのは、例外的な場合です。
- お願いしても、送還は止まりません。
帰国することを選ぶ場合
退去強制で帰国すると、多くの場合、5年間は日本に入ることができません。
- 前にも日本から出るように命じられたことがある場合は、10年間です。
- 刑事裁判で1年以上の刑を受けた場合や、薬物の罪で刑を受けた場合があります。このときは、期間の決まりなく、日本に入れないことがあります。
- 初めて退去強制される人は、自分で費用を払って帰国する許可と、法務大臣の決定を受けることがあります。決められた期限までに出国すれば、1年間になることがあります。ただし、薬物の罪や、1年を超える実刑の場合は、この扱いになりません。
帰国するかどうかは、日本にいる家族のことも考えて、よく話し合ってから決めてください。
通訳・支援者の方へ
期限が3日しかない手続です。急ぎのご相談は、お問い合わせフォームではなく、お電話でお知らせください。
ご相談には、通訳の方に同席していただけます。事務所に通訳はおりませんので、ご本人が信頼できる方にお願いしてください。同席する方の交通費などは、当事務所ではお支払いしていません。
ご紹介の際は、次のことをお知らせください。
- ご本人のお名前と、話せる言葉
- いまどこにいるか(警察署、入管の施設など)
- 逮捕された日、または収容された日
- 在留カードを持っているかどうか
- 入管から、審査などの結果を伝えられたかどうか。伝えられた場合は、その日
- 日本にいる家族のこと
警察や入管から届いた書面は、すべてお持ちください。くわしくは、外国人問題のページをご覧ください。