突然の解雇に納得できないとき、最初に確認すること

解説労働問題

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「明日から来なくていい」「今月末で解雇する」。突然そう告げられると、多くの方は動揺し、仕方がないと受け入れてしまいがちです。

しかし、日本の法律では、会社が従業員を自由に解雇できるわけではありません。解雇の理由やそれまでの経緯によっては、解雇が無効になることがあります。

この記事では、解雇に納得できないときに、まず確認していただきたいことを説明します。

解雇には「合理的な理由」と「相当性」が必要

労働契約法は、解雇について次のように定めています。

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。(労働契約法16条)

つまり、解雇が有効になるためには、解雇するだけの合理的な理由があり、かつ、その事情に照らして解雇という処分が重すぎないことが必要です。

たとえば、能力不足や勤務態度の問題を理由とする解雇では、次のような事情が問題になります。

  • 会社が指摘する能力不足や勤務態度の問題が実際にあったか
  • その問題が解雇に値するほど重大なものか
  • 会社が必要な注意や指導を行ったか
  • 改善する機会が与えられていたか
  • 配置転換などによって対応できなかったか

したがって、単に「成績が悪かった」「会社の期待に達しなかった」というだけで、当然に解雇が有効になるわけではありません。

会社の経営悪化を理由とする解雇(整理解雇)

会社の経営上の理由による解雇は、従業員側に落ち度がないため、特に慎重に判断されます。

裁判所では、主に次のような事情が考慮されます。

  • 人員を減らす必要性があるか
  • 解雇を避けるための努力(役員報酬の削減、希望退職の募集など)をしたか
  • 解雇する従業員の選び方が合理的か
  • 従業員や労働組合に対して必要な説明や協議をしたか

これらの事情を総合して、整理解雇が有効かどうかが判断されます。

契約期間の途中での解雇

契約社員など、期間の定めのある労働契約の場合、契約期間の途中で解雇するには「やむを得ない事由」が必要です(労働契約法17条1項)。

無期雇用の従業員を解雇する場合よりも、さらに厳しい要件が課されています。

「解雇予告手当」を払えば解雇できる、わけではない

会社が従業員を解雇するときは、原則として、少なくとも30日前に解雇を予告しなければなりません。

30日前に予告しない場合には、30日に不足する日数分の平均賃金を「解雇予告手当」として支払う必要があります(労働基準法20条)。たとえば、解雇日の20日前に予告した場合には、原則として不足する10日分の平均賃金を支払う必要があります。

ただし、これは解雇の「手続」に関するルールです。

解雇予告手当を支払ったからといって、合理的な理由のない解雇が有効になるわけではありません。

解雇を告げられたら、まずしておくこと

1. 解雇の理由を書面で求める

従業員が求めた場合、会社は、解雇の理由を記載した証明書を交付しなければなりません(労働基準法22条)。

解雇の理由を早い段階で書面にしてもらうことで、会社が後になって別の解雇理由を追加するなどした場合にも、当初どのような理由で解雇したのかを確認しやすくなります。

解雇理由証明書を求める場合は、メールなど、請求したこと自体も記録に残る方法を利用するとよいでしょう。

2. 退職届や合意書に、すぐにサインしない

会社から「退職届を書いてほしい」「この合意書にサインしてほしい」と言われることがあります。

しかし、退職届などを提出すると、解雇ではなく、ご自身の意思による退職や会社との合意による退職と扱われることがあります。

そうなると、その後に「本当は会社から解雇された」と主張することが難しくなる場合があります。

内容に納得できない場合は、その場で署名せず、いったん持ち帰って検討してください。

また、解雇をする代わりに、会社から退職を勧められることがあります。これを「退職勧奨」といいます。

退職勧奨は、あくまで会社から退職を求める働きかけであり、応じる義務はありません。

3. 資料を手元に残す

次のような資料は、後で解雇の有効性を判断するうえで重要になります。

  • 解雇通知書、解雇理由証明書
  • 雇用契約書、労働条件通知書
  • 就業規則
  • 給与明細
  • 人事評価の資料
  • 会社から受けた注意や指導の記録
  • 解雇に至るまでの上司とのメールやメッセージ

会社から貸与されているパソコンやメールアカウントは、解雇後に利用できなくなることがあります。ご自身が受け取った書類やメールなど、適法に保存できる資料については、早めに確認しておくとよいでしょう。

ただし、会社の営業秘密、顧客の個人情報、他の従業員に関する機密情報などを無断でコピーしたり持ち出したりすると、別の問題が生じる可能性があります。

何を保存してよいか判断に迷う場合には、データを大量に持ち出す前に弁護士に相談してください。

解雇を争う方法

解雇の無効を争う方法には、主に次のものがあります。

  • 交渉:会社と話し合い、解雇の撤回や金銭による解決などを求めます。
  • 労働審判:労働審判官(裁判官)1名と、労働関係について専門的な知識・経験を持つ労働審判員2名で構成される労働審判委員会が審理します。原則として3回以内の期日で審理を終えるため、訴訟と比べて迅速な解決を図ることができます。
  • 訴訟:従業員としての地位があることの確認や、解雇後に支払われなかった賃金などを請求します。

解雇が無効となれば、原則として、解雇日以降の賃金をさかのぼって請求することができます。

ただし、解雇後に別の会社で働いて収入を得ていた場合などには、事情によって支払われる金額が調整されることがあります。

解決の形は「復職」だけではない

解雇の無効を争ったからといって、必ず職場に戻らなければならないわけではありません。

実際の紛争では、会社が一定の解決金を支払い、双方が合意したうえで退職するという形で解決することもあります。

元の職場に戻りたいのか、それとも一定の金銭を受け取って退職する解決を希望するのかによって、交渉や手続の進め方も変わります。

ご自身がどのような解決を希望するのかを整理しておくことも大切です。

解雇を争っている間の生活

解雇を争っている間は、会社から給与が支払われないのが通常です。

解雇の効力を争いながら、雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)の支給を受けられることがあります。

ただし、これは一定の要件のもとで行われる暫定的な取扱いです。後に解雇が無効となり、解雇時にさかのぼって会社から賃金が支払われた場合には、受給した基本手当の返還が必要になることがあります。

具体的な手続については、ハローワークに確認してください。

また、残業代を含む賃金の請求権には消滅時効があります。賃金請求権(退職金を除く)の時効は、当分の間、それぞれの賃金の本来の支払日(給料日)から3年とされています。

そのため、毎月の賃金について、古いものから順に時効の問題が生じていきます。

解雇の無効を主張すること自体について、賃金請求権と同じような3年の消滅時効が定められているわけではありません。しかし、時間が経過するほど、証拠の確保や事実関係の確認が難しくなります。

解雇に納得できない場合には、できるだけ早く対応を検討することが重要です。

ご相談にあたって

解雇が有効かどうかは、会社が示している解雇理由だけで決まるものではありません。

解雇に至るまでの経緯、それまでの注意・指導の内容、従業員の勤務状況、会社の規模、就業規則の内容など、さまざまな事情によって判断が変わります。

解雇を告げられた方や、退職を勧められている方は、退職届や合意書などに署名する前に、お早めにご相談ください。

解雇通知書、就業規則、雇用契約書、会社とのメールなど、お手元にある資料をお持ちいただくと、具体的な見通しを検討しやすくなります。

なお、当事務所では、従業員の解雇を検討している会社・経営者の方からのご相談にも応じています。

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