上場していない会社の株式はどう評価するか。相続・離婚・事業承継で問題になる株価の考え方

解説企業法務

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親が経営していた会社の株式を相続した。夫(妻)が経営する会社の株式が、財産分与で問題になった。株式を手放したいが、会社からいくらで買い取ってもらえるのか分からない。

上場している会社の株式は、取引所での値段(株価)が毎日公表されています。ところが、上場していない会社(いわゆる非上場会社。中小企業のほとんどがこれにあたります)の株式には、市場の値段がありません。そのため、株式の価値をいくらと考えるかで、受け取る額や支払う額が大きく変わり、意見が分かれやすくなります。

この記事では、上場していない会社の株式を評価する方法と、それが問題になる場面について説明します。

株価を求める主な方法

上場していない会社の株式の評価には、主に次の3つの考え方があります。

考え方 主な方法 内容
会社の財産から考える 純資産法 会社の資産から負債を差し引いた純資産を、株式の数で割る
会社が生み出す利益から考える DCF法、収益還元法、配当還元法 会社が将来生み出す利益や、株主が受け取る配当をもとにする
ほかの会社と比べる 類似会社比較法、取引事例法 似た上場会社の株価や、その会社の株式の過去の売買の値段と比べる

実際には、一つの方法だけで決めるとは限らず、会社の状況に合わせて、複数の方法の結果を組み合わせて評価することも多いです。

純資産法(会社の財産から考える)

会社の資産から負債を差し引いた「純資産」を、発行している株式の数で割って、1株あたりの価値を求めます。

決算書(貸借対照表)の数字をそのまま使う方法(簿価純資産法)は分かりやすい反面、実際の価値とずれることがあります。たとえば、何十年も前に買った土地は、決算書には買ったときの値段で載っています。そのため、不動産などを時価に置き直して計算する方法(時価純資産法)が使われることが多いです。会社の不動産の評価のしかたは、「不動産の評価はどう決まるか。相続・離婚・共有で使われる価格の違い」をご覧ください。

不動産を多く持つ会社や、事業をやめることが前提の場面では、この方法が重く見られやすくなります。

収益から考える方法

会社が将来生み出す利益(キャッシュフロー)を見込み、それを現在の価値に直して評価する方法(DCF法)が代表的です。事業を続けていく会社の価値を表す方法として、重く見られることがあります。

ただし、将来の利益の見込み方によって、結果は大きく変わります。事業計画が楽観的すぎないか、確かめる必要があります。

会社の1年あたりの利益を、一定の利回りで割り戻して評価する方法(収益還元法)もあります。

このほか、株主が受け取る配当をもとに評価する方法(配当還元法)もあります。会社の経営に関わることがなく、配当を受け取るだけの立場の株主(少数株主)の株式を評価するときに使われることがあります。ただし、配当をほとんど出していない会社では、価値が低く出すぎることがあります。

ほかの会社と比べる方法

事業の内容や規模が似た上場会社の株価をもとに、利益や純資産の比率で調整して評価する方法(類似会社比較法)です。ただし、中小企業とよく似た上場会社は見つけにくく、使いにくいこともあります。

その会社の株式が、最近、第三者の間で売買されていれば、その値段も参考になります。ただし、親族の間の売買など、特殊な事情がある値段は、そのままでは使えません。

誰が持っている株式かで、評価が変わる

同じ会社の株式でも、誰が持っているかによって、評価が変わることがあります。

  • 会社を支配する株主(経営者など)の株式:会社の経営を決め、会社の財産や利益を実質的に左右できます。純資産法や収益から考える方法で、会社全体の価値をもとに評価されやすくなります。
  • 少数株主の株式:会社の経営を決められず、配当を受け取ることが主な利益になります。配当還元法が使われたり、会社全体の価値から一定の割合を差し引いたりすることがあります。

また、上場していない会社の株式は、売りたくても買い手が限られます。この「売りにくさ」を理由に評価を下げるかどうかも、場面や評価の方法によって判断が分かれます。

税金の計算のための評価とは別

相続税や贈与税の計算でも、上場していない会社の株式の評価方法が定められています。ただし、これは税金を計算するための評価です。遺産分割や財産分与、裁判所が売買価格を決める場面で、そのまま使われるとは限りません。

税金の計算のための評価は、税理士の業務です。ご希望があれば、当事務所から税理士をご紹介します。

株価が問題になる場面

相続(遺産分割)

会社の株式も、遺産分割の対象になります。原則として、遺産を分ける時点の価値で評価します。

会社を継ぐ相続人が株式をまとめて取得し、ほかの相続人には代わりのお金(代償金)を支払うことが多いです。そのため、株価が高いほど、会社を継ぐ相続人の負担が重くなります。会社を継ぐ相続人は低く、ほかの相続人は高く評価したいと考えるため、意見が分かれやすい点です。

会社を継ぐ子が生前に株式の贈与を受けていた場合は、その贈与が特別受益として考慮されることがあります。そのときは、相続が始まった時点の株式の価値が問題になります。

遺産分割が終わるまでの間、株式は相続人全員の共有の状態になります。株主総会で議決権を使うには、相続人の間で議決権を行使する人を1人決め、会社に通知する必要があります(会社法106条)。行使する人は、相続人全員の一致でなくても、相続分に応じた持分の過半数で決められるとされています(最高裁平成9年1月28日判決)。誰を行使する人にするかで、会社の経営をめぐる争いになることもあります。

亡くなった方が会社を経営していた場合の財産の調べ方は、「亡くなった方の財産をどう調べるか。相続人ができる調査とその限界」の「亡くなった方が会社を経営していた場合」をご覧ください。

会社から株式の売渡しを求められる場合

株式の譲渡に会社の承認が必要な会社(中小企業の多くがこれにあたります)では、定款に定めがあれば、会社が、相続で株式を取得した人に対して、その株式を会社に売り渡すよう請求できます(会社法174条)。この請求は、会社が相続があったことを知った日から1年以内にしなければなりません(会社法176条1項)。

売買の値段は、会社と相続人の話し合いで決めます。まとまらない場合は、請求の日から20日以内に、裁判所に値段を決めるよう申し立てることができます。裁判所は、会社の資産の状態その他一切の事情を考えて値段を決めます(会社法177条)。この期間内に申立てがなく、話し合いもまとまらなかった場合は、請求は効力を失います。

会社の経営に関わらない相続人が、この制度によって株式を手放すことになる場面では、株価が直接の争点になります。

また、この請求をするには、そのたびに株主総会の決議が必要です。売渡しを請求される相続人は、その決議で議決権を使えません(会社法175条)。そのため、経営者の株式を相続した人が請求の対象になり、ほかの株主の決議によって経営権を失うおそれもあります。

遺留分

会社を継ぐ子に、生前に株式を贈与したり、遺言で株式を集中させたりすると、ほかの相続人の遺留分を侵害することがあります。遺留分の計算では、相続が始まった時点の株式の価値が問題になります。会社を継ぐ子が経営に努めて、贈与の後に株価が上がった場合でも、原則として、上がった後の相続開始時の価値で計算されます。

株価が高い会社ほど、会社を継ぐ子が支払う遺留分侵害額が大きくなり、事業の承継の妨げになることがあります。なお、中小企業については、一定の条件のもとで、会社を継ぐ子に生前に贈与した株式を遺留分の計算から外したり、その価値を固定したりできる特例があります(中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律)。

遺留分の仕組みは、「遺留分の請求は「1年」に注意」をご覧ください。

離婚(財産分与)

夫婦の一方が持っている会社の株式も、婚姻中に夫婦の協力で取得・維持したものであれば、財産分与の対象になります。たとえば、婚姻中に夫婦の財産から出資して会社を設立した場合や、婚姻中に株式を買い増した場合です。結婚前から持っていた株式や、親から相続したり贈与を受けたりした株式は、原則として対象になりません。対象になる財産は、原則として別居した時点のものです。

株式そのものを分けることは少なく、株式を持つ側が持ち続け、その価値に応じたお金を支払う形で分けるのが一般的です。会社の財産と、経営者個人の財産の区別については、「離婚の話し合い・調停で、相手の財産をどう調べるか」の「相手が会社を経営している場合」をご覧ください。

株式を譲り渡そうとして、会社が承認しない場合

株式の譲渡に会社の承認が必要な会社で、株主が株式を第三者に譲り渡そうとして承認を求めるときは、あわせて「承認しない場合は、会社または会社が指定する人が買い取ること」を求めることができます(会社法138条)。これを求めていた場合に会社が承認しないときは、会社または会社が指定した人が、その株式を買い取ることになります(会社法140条)。買取りを求めずに承認だけを求めた場合は、会社が承認しなくても、誰も買い取りません。

売買の値段は話し合いで決め、まとまらない場合は、裁判所に値段を決めるよう申し立てることができます(会社法144条)。申立ては、会社などから買い取るという通知があった日から20日以内です。期間内に申立てがなく、話し合いもまとまらなかった場合は、1株あたりの純資産額をもとにした値段になります。この額は決算書の数字(帳簿の価額)をもとにするため、土地を多く持つ会社などでは、実際の価値より低くなることがあります。期限に注意が必要です。

評価のために必要な資料

株式の価値を検討するには、次のような資料が必要です。

  • 決算書(計算書類):少なくとも直近3期分。勘定科目の内訳書もあると、会社と経営者個人の貸し借りなども分かります。決算書の読み方は、「取引先の信用と自社の状況をつかむ、計算書類(決算書)の読み方」をご覧ください。
  • 法人税の申告書:決算書とあわせて、会社の利益の状況を確認します。
  • 株主名簿:誰が何株を持っているかを確認します。
  • 定款:株式の譲渡に会社の承認が必要か、相続した人への売渡しの請求の定めがあるかを確認します。
  • 会社が持つ不動産の資料:登記事項証明書、固定資産税の納税通知書など。純資産法で時価に置き直すために使います。
  • 事業計画:収益から考える方法で、将来の利益を見込むために使います。

株主であれば、会社に対して計算書類の閲覧や写しの交付を求めることができます(会社法442条3項)。ただし、法人税の申告書や勘定科目の内訳書は、この対象ではありません。会社の帳簿などを見るには、議決権または発行済株式の3%以上を持っていることなどが必要です(会社法433条)。

評価で意見が分かれたときは

株価で意見が分かれた場合は、次のように進めます。

  1. どの方法で評価しているかを確かめる:同じ会社でも、純資産法と収益から考える方法とでは、結果が大きく違うことがあります。相手の示す株価が、どの方法で、どの数字を使って求めたものかを確認します。
  2. 前提を比べる:不動産を時価に置き直したか、将来の利益をどう見込んだか、少数株主として差し引きをしたかなど、結果を左右する前提を一つずつ比べます。
  3. 算定書を取る:公認会計士などに、株価の算定書の作成を依頼することがあります。一方が依頼した算定書は、相手が受け入れないこともあります。
  4. 裁判所の手続の中で鑑定する:裁判所が売買価格を決める手続や、遺産分割の調停・審判などでは、裁判所が選んだ公認会計士などによる鑑定が行われることがあります。鑑定の費用は、当事者が前もって納めます。

株式の評価は、不動産の評価よりも前提の置き方で結果が大きく変わりやすく、費用もかかります。評価の差で動く金額と、評価にかかる費用や時間とを比べて、どこまで争うかを判断することが大切です。

ご相談にあたって

上場していない会社の株式の価値は、相続、遺留分、財産分与、会社との売買など、さまざまな場面で問題になります。どの方法で評価するか、誰が持つ株式として評価するかによって、受け取る額や支払う額が大きく変わります。

当事務所では、弁護士になる前の経理の経験を生かして、会社の決算書を読み解き、いくつかの評価の方法で株価を試算して、比較しながら方針を決めていただけるようにしています。

ご相談の際は、会社の決算書(直近3期分)、株主名簿、定款など、お手元にある資料をお持ちください。

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